手技時のChecklist(必見)

このページでは、よりチャンスを広げ、より安全に、より正確に手技ができるよう、より取り上げられる可能性が減るよう、研修医の先生が知っておくべき/心掛けておくべきチェックリストを作成しました。
あくまでも手技全般を通しての事項であって、一つ一つの手技におけるものではないことはご了承ください。

手技のChecklist

・事前準備

1|手技の予習:事前学習は必須。 直前はさらっとでも流して確認しよう。
2|凝固系のチェック:Plt/PT-INR/APTTが崩れていないか、さらに抗凝固薬/抗血小板薬が入ってないかを確認。
3|解剖のチェック:一般論はあくまで一般論。その患者さん毎に刺入に適した部位が違う可能性もあれば、固有の解剖学的変異がないかも確認が必要。
4|事前の触診、pre-scan:事前に拍動が触れるかなど診察したり、エコーで目標の確認したりなどを行おう。
5|ポータブルレントゲンのオーダー:CVや挿管の場合は操作後の位置確認が必要。先にやっておくと吉。
EX|何故この手技が必要なのかチェック:必要のない侵襲的な処置は行わない!今後のために適応についても考えておこう。

・手技事体の準備

1|患者さんに通達:(ICは既に済んでいるでしょうが)これから何をするのかをしっかりお話しましょう。
2|ベッドの高さ調整:自分が最も手技しやすいように。
3|清潔野などの設定:手の届きやすい場所に処置台を配置する。処置する部位の下に吸水シーツを敷くなどしておきましょう。
4|清潔操作:アル綿でしっかり皮脂を落とそう。その上でイソジン等で消毒を。

・実践 主に心構え

1|常に、次に何をするのか/自分が何をしているのか、を見失わないこと
2|(難しくて失敗が続くなどで)頭に血が上って訳分からなくなったら、交代してもらうよう打診しよう
3|違和感がある/想定外の事体が起こったら、すぐに確認を取ろう
4|モニタ音にも注意を払おう:手技中にバイタル崩れていないかにも注意を払おう。(本来なら最優先すべきこと)

研修医の先生方には、

“救急科研修といえば手技!手技といえば救急科! 患者さんがたくさん来るから挿管にCVにいっぱいやらせて貰えるんだろうなぁ”

と、思っている方も多いのではないでしょうか?
確かにCV、A-line、挿管といった手技は救急外来やICUなどにおいて、麻酔科に並んでよく行われる手技ではあります。
しかし、忙しい救急外来、ICU業務の合間を縫いながら研修医の先生方にやってもらうというのは、実は結構 しんどい のです。

まず危ない、危ないということは上級医が一人張り付かないといけない。 さらに時間が掛かる、時間が掛かるということはコメディカルも拘束される。 そして何より、患者さんからすれば習熟した医師にしてもらった方が短時間で済みますし、侵襲も少なく済みます。

もちろん、教育は上級医にとって最も重要なtaskの一つですし、自分だってやらせて来て貰ってきたからこそ今が在るわけですので、可能な限りやらせてあげたいとは思っております。

ですので、 研修医の先生側の協力が非常に重要 になってくるのです。
このページのチェックリストを実践してもらうことで、

やるやん、、、ほなやってもらおうかな

と、なったり、

ちゃんと危ないことが分かっていて、限界を感じたら交代も申し出られるのか、、、 今回はダメだったけど、次回も初回は任せられそうだな

と、なりやすくなること間違いなしです!たぶん
救急科に限らずどの科でも共通する事項ですので、是非参考にしてください。
それでは、以下で簡単に解説していきます。

解説

・事前準備
何事もそうですが、事前の準備なくして本番で良いパフォーマンスを発揮することは適いません。

1|手技の予習
何百ページに渡る清書で勉強しろ!、とまでは言いません。簡単な教科書で構わないので、一度は手技全体の流れ、手技前の準備、手技時に注意すべき事項、起こりうる合併症などを学習するようにしましょう。
研修医の時分は膨大に勉強すべきことがあり、手技までは手が回っていないことも往々にしてあるかと思います。
その場合は正直にまだ勉強できてないことを上級医に伝え、最低でも一度は見学し、その日のうちに上記の通り学習するようにしましょう。

2|凝固系のチェック
侵襲的な手技の前には必ずチェックするようにしましょう。
手技そのものの難度が上がることを認識し、また出血による合併症への警戒度を上げることも安全に手技を行うことにつながります。
あまりに酷い値だった場合は手技を中止する(辞退する)ことも視野に入れるべきです。

データの確認だけでなく、内服の確認も怠らないようにしましょう。

3| 解剖のチェック
“第〇肋間の~~に穿刺”、などと参考書にあっても、実際の患者さんに適応できない場合もあります。
胸水や気胸のspaceが当該部位で実際には狭いこともあれば、CVC留置の長さが首の長さや刺入部位によって前後することもある、といった感じです。上級医と確認するようにしましょう。

参考書は参考書であって、妄信はしないこと。

また、画像チェックに併せて(どちらかという各論の話になりますが)目標物の周囲に怖い構造物は何があるか、それによりどんな危ないことが起こりうるか、などもさらっと確認できるとgood。

4|事前の触診、pre-scan
上記の通りです。本番になってやっぱり触れない、エコーでいい位置が見つからない、などとならないように注意しましょう。

5|ポータブルレントゲンのオーダー
上級医でも忘れがちです。入っていなかったら先に提案できるとgood。

EX|何故この手技が必要なのかチェック
初めのうちはそこまで気は回らないと思います。が、今後研修を終わったのち自分で患者さんを見ないといけなくなった場合に備えて、余裕ができたら考える、質問するようにしましょう。
例えばCVなら、末梢は確保できているがNADが投与されている、KClで急速に/何度もK補正が必要、などなど。

・手技事体の準備

1|患者さんに通達
上記の通りです。ICに限りませんが、自分や自分の家族だったらと思って、お話しましょう。

2|ベッドの高さ調整
上記の通りです。初めの頃は特に、事前の準備や緊張で忘れがちです。
ベッド、ストレッチャーは安全面への配慮から、基本的に低めがデフォルトです。はじめは手技に集中するあまりベッドの高さまで気が回らないことが往々にしてあります。 
必ず高さを合わせて自分にとって最もやりやすい状態を作りましょう。

3|清潔野などの設定
ベッドの高さ調節と同じく、自分にとって最も作業しやすいように作業台やエコーの位置を決めましょう。
手技の難易度は準備を疎かにすればするほど上がります。
また、清潔操作に入るとこれらの移動は難しくなり、手技の進行も妨げることになりかねません。
スマートに、迅速に、安全に手技を行えるように、ここまでの事前の準備、手技のそのものの準備を入念に行いましょう。急がば回れ、です。

4|清潔操作
上記の通りです。皮脂まみれなのに上からいくらイソジンで消毒しても、細菌たちは皮脂のなかで蠢いています。
必ず皮脂をしっかり落としてから消毒しましょう。

・実践 心構え
1|常に、次に何をするのか/自分が何をしているのか、を見失わないこと

2|(難しくて失敗が続くなどで)頭に血が上って訳分からなくなったら交代してもらうよう打診しよう

3| 違和感がある/想定外の事体が起こったら、すぐに確認を取ろう

4|モニタ音にも注意を払おう:手技中にバイタル崩れていないかにも注意を払おう。(本来なら最優先すべきこと)

以上は手技中の心構えです。

初めの内は特に、頭に血が上って当たり前のことや覚えていたことが抜け落ちたり、ムキになって何度もtryしてしまってぐちゃぐちゃにしてしまったりしてしまいがちです。
“stay cool” でいきましょう。

これから何度でも手技に携わる機会はあります、第一に患者さんの安全のため、延いては自分自身の為に、“撤退すること” も常に選択肢として持っておくようにしましょう。

まとめ

以上、いかがでしたか?
“ぜんぜんやってなかったなぁ”と思った方もいれば、心構えの項を見て”ギクリ”となった方もいるのではないでしょうか。
これをページを見て、皆さんが少しでも“安全に”“確実に”、手技できることを願っています。

~Take home message~
・準備こそが手技の安全性、成功率を上げる鍵
・ベッドの高さや物の配置や準備も忘れずに
・stay cool、撤退することが患者さん、延いては自分の為になる

Good luck on your well procedure !

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